K-TOWN・K-HALL街に溶け込む単身寮
01_黒部駅前に活気をもたらす
プロジェクト概要
「K-TOWN」は建築家 東京大学名誉教授 大野秀敏氏の設計で、あいの風とやま鉄道黒部駅前のまちづくりの一環として、駅前のランドマークとなるK-HALLと老朽化したYKKグループの社有単身寮の代替施設となる100戸の住居を整備するプロジェクトです。
地域に根ざし自立した暮らしを目指した、4戸1棟の低層戸建て形式の単身寮を駅前周辺に分散させ、商業店舗や多目的ホールが入るK-HALLを寮の共用施設として住居から切り離し建設し、地域の方にも開放することで、黒部駅前の活性化や賑わいづくりを進めています。
寮の垣根を取り払い、まちなか型の寮をつくる
本プロジェクトはひとつの敷地に寮生の居室や共同食堂・浴室などを複合した一般的な寮(以下、「団地型の寮」という)とは違い、駅前の複数の飛び地状の敷地にまたがっており、団地型の寮の計画には不向きな立地で進められました。駅前の寮という特別なロケーションと敷地の形状を考慮し、設計者が提案したのは寮の居室4室を1棟とする小規模共同住宅を分散して25棟建設するという新しい寮の形(以下、「まちなか型の寮」という)でした。
「まちなか型の寮」では食堂やラウンジなどの共用施設に関しても「寮」の概念から自由になる必要がありました。寮の共用施設の稼働率の低さや駅前に人が集まれる場所がないことを解決する方法として、食堂やラウンジ機能を居住部分から切り離し、町の人も利用できる施設として整備したのがK-HALLです。
周囲と対話する建築
A・B街区は既存の木造住宅に囲まれた場所にあり、敷地も不整形な土地でした。隣家も迫っているため、防災的見地より鉄筋コンクリート造とし、建物の高さも抑えました。また、誰でも通り抜け自由な通路を街区内に設けています。
C街区はもともと工場敷地の一部で、まとまった形をした開けた場所でした。既存の松林を活かし、それを囲むように木造の居住ユニットを配しています。北側の道路を挟んで並ぶ戸建て住宅地と一体となって良好な住宅地を形成することも「まちなか型の寮」としての重要な勤めです。
寮の共用施設であるK-HALLは、A・B街区とC街区の要の位置にあり、同時に、あいの風とやま鉄道黒部駅前広場にも面します。独特でダイナミックな外形は圧倒的な存在感を示し、駅前の風景を一新します。全面ガラス張りの硬質なファサードは、昼は駅前に現代的な香りを呼び込み、夜には内部で活動する人達の姿が個性的な照明によって浮かびあがることで、人気が少なかった駅前広場に活気をもたらしています。